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あるブティックでの忘れ得ぬ想い出 [オシャレ]

もうかれこれ10年以上前の話にはなりますが、当時よく利用していたブティックに
美大を卒業したばかりの若い店員Tさんがいました。

もともと私はそれ程オシャレなほうではなく、洋服を選ぶ時は着心地が最も重要
で、デザインや色は主人や店員など他人に任せてしまうところがあります。
ある日、行きつけのブティックでスーツを選んでいて、ラベンダーとクリームの2色
で迷ってしまい、店員に多数決を取って、ほぼラベンダーに決めかけていました。

その時です。当時まだニューフェイスだったTさんが、「お客様は人からどう見られ
たいですか」と私に尋ねました。返事に困っていると、Tさんは「ラベンダーだと個
性的に、クリーム色だと上品に見えます。私はクリーム色のほうがお勧めですけ
れど、お客様は個性的に見えることをお望みですか」と言いました。

その時、側にいた店長の慌てぶりが面白かったです。
でも、店長の心配をよそに、私はこの若い店員Tさんを気に入り、担当になっても
らうことにしました。そして、その日のスーツは、もちろんクリーム色を選びました。

Tさんは後に、その日の出来事について、「ラベンダーのほうは、色や素材、デザ
インなどのバランスが悪くて、個性的に見えるというより個性的に見せたがってい
るような主張の強さを感じたので、あまりお勧めしたくなかった」と言っていました。
私は、さすが美大出身だと思いました。完成度の低い服、似合わないと思う服は
絶対に勧めない人で、主体性のない私には本当に良いアドバイザーでした。

仕事を始めて最初の担当が私だったとのことで、本人も喜んでくれ、その後お店
をやめるまでの数年間、本当にいい仕事をしてくれました。
そして、彼女と交わした数々の会話は今でも私の記憶に鮮明に残っていて、その
助言にはショッピングやコーディネイトで迷う度に助けられています。
結婚が決まったとの報告を受け、想い出をしたためつつ、Tさんの幸せを願います。

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