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『逮捕されるまで(空白の2年7ヵ月の記録)』(市橋達也) [本・雑誌]

私の周りでも「絶対に読まない」と決めている人もいるくらい、出版について賛否両論のある
『逮捕されるまで(空白の2年7ヵ月の記録)』(市橋達也)を、野次馬根性で読んでみました。

私は著者の文章も挿絵も嫌いではなくて、読み物としては面白かったです。
主に2年7ヵ月に及ぶ逃亡生活について綴られているわけですが、著者の記憶力の良さに
驚き、とても頭のいい人だとも思いました。
ただ、所詮本ですし、出版の時期が時期なだけに事件の真相について書かれているはずも
なく、私は、手記というよりも、著者自身の経験を基に書かれた小説として読みました。

被害者の台詞"My life is for me."(「私の人生は私のもの」)は、著者自身の言葉のように
も聞こえます。小説の中の著者は、逮捕の恐怖に怯えながらも、生き生きとしていて生命力
もあり、生まれて初めて自分の人生を生きているかのような印象を受けます。
著者は"My life is for me."の意味が分からなかったと言っていますが、事件以前の著者の
人生で"My life is for me."を実感することがなかったようにも思われ、そのことがとても気に
なりました。

事件そのものの核心には触れていませんが、被害者との関係がどのようなものであったか
を連想させる記述は所々に見られます。私には、被害者が決して踏んではならない地雷を
踏んでしまったようにも感じられました。(報道でストーカーという言葉を見聞きしたこともあり
ますが、私は、二人はそこそこ親しかったのではないかと思います。また、被害者が著者に
対して言ったという言葉の中にも、妙に引っ掛かるものがありました。)

著者がどこまで真実を話すのか分かりませんし、おそらくすべてが明らかになることはないと
思いますが、この本を読み終えて、著者の成育環境にも一段と強い関心が生まれました。

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