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JR福知山線脱線事故で前社長に無罪判決 [事件・事故]

2005年に乗客106人と運転士の合わせて107人が死亡したJR福知山線の脱線事故で、
業務上過失致死傷の罪に問われたJR西日本の山崎正夫前社長に、神戸地方裁判所
は11日、無罪判決を言い渡しました。山崎前社長の前に社長を務めたJR西日本の歴代
社長3人も同罪で強制起訴されており、今春以降に裁判が始まるものとみられています
が、この3人の有罪の立証はさらに困難を極めそうです。

さて、この脱線事故は、列車が制限速度を超えてカーブに進入して起きました。
しかし、公判では、運転士による大幅な速度超過の原因を追求することもなく、事故現場
となったカーブ設置時点での危険認識に争点が集約されたようです。

裁判長は、JR西日本の組織としての責務について、「安全対策という点では、カーブで
の転覆リスクの解析やATS(自動列車停止装置)整備の在り方に問題があり、期待され
る水準には及ばなかった」と指摘したものの、「当時、カーブにATSの設置を義務づける
法令はなく、山崎前社長が事故の危険性を認識していたとは言えず、事故を防ぐ措置を
取らなかったことに対する過失は認められない」として、無罪を言い渡しました。

道義的責任と法的責任との間にある壁は、高くて厚いです。私は民事裁判の傍聴経験
しかないのですが、その時、法廷は真実を究明する場所ではないと実感しました。また、
裁判で立証するのは厳密かつ困難なことだとも感じました。
複合的な要因が絡んだ事故の責任を、特定の個人にのみ問うことには、もちろん限界が
あるでしょう。しかし、組織としての安全管理が適切ではなかったことが指摘されながら、
日本の刑法では組織自体の刑事責任を問うことができないのは歯がゆいですね。

ところで、この脱線事故は、事故発生時の運転士の精神状態が少なからず影響したよう
な印象を受けます。多くの命を預かる事業者の安全対策としては、運転士の精神衛生に
配慮することも大事なことのように感じます。また、パイロットなどは厳しい適性検査があ
ると聞きますが、この事故を受けて、運転士に義務づけられている適性検査を見直すこと
になったそうです。人間は機械ではないという前提に立った安全対策を強く望みます。

11日の判決後、当然のことながら、遺族からは控訴を求める声が相次いだとのこと。
「控訴は困難」との慎重論もあるようですが、今後の検察の動きを見守りたいと思います。

2012年2月6日追記:
神戸地検は4日、控訴を断念した理由を被害者側に伝え、謝罪したそうです。
遺族からは、企業の責任を問える法改正の必要性を訴える声が挙がったとのこと。

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