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『Touching from a Distance(タッチング・フロム・ア・ディスタンス)』(4) [本・雑誌]

本書は、イアン・カーティスの未亡人であるデボラ・カーティスによる、イアンの伝記です。
そして、著者はイアンとの間に離婚問題を抱えていた当事者でもあります。よって、書かれて
いることが全て真実だとは思えないですし、特に離婚問題、愛人問題についての記述に関し
ては、実際に矛盾も多々感じます。でも、当時イアンの置かれていた状況を探る手がかりとし
ては、とても興味深い本だと思います。

本書を読む限りでは、著者は、亡くなったイアンよりも自分のことを最大の被害者だと思って
いるように感じられます。他者の言葉を借りているとはいえ、イアンの死について、「癲癇の
薬の副作用が原因」(じゃあ、薬以外でどうやって癲癇の発作を抑えればよかったの?)とか
「イアン本人が周りに助けを求めてさえいれば…」(本人のSOSに周りが気づかなかっただ
けじゃないの?)とか「もともと本人が死に魅せらていた」(それって希死念慮じゃないの?)
など、数々の突っ込みを入れたくなるような趣旨の文言には驚かされます。

イアンがフルタイムの仕事を辞めた後、カーティス家の経済状態はかなり悪化したようです。
著者は亡きイアンの金銭感覚を批判していますが、著者自身も、イアンが癲癇の発作を抱え
ながらもステージに立ち続けている状況の中で一戸建てに住み続けることを望んだり、十分
に独特な価値観の持ち主だと感じました。
本書を読み終えて、私は、著者の結婚生活が破綻したことに何ら疑問を感じませんでした。
イアンの愛人問題以前に、すでに二人の関係はギクシャクしていたように見受けられます。

さらに、著者は、イアンの愛人アニックに対して、事実無根の辛辣な批判までしています。
気持ちは分からないでもないですが、著者が当時のことをどのように表現しようと、アニックの
存在が、癲癇の症状が悪化し身体的にも精神的にも困難な状況にあったイアンを支えていた
ことは間違いないと思います。

本書によると、著者は怒りを抑えきれず、アニックの職場にまで電話したこともあるそうです。
(著者とイアンの夫婦関係が実質上終わったことを著者が認めていないことを悟ったアニック
のとまどいは、とても大きかったようです。そして、このことがイアンをさらに追い詰め、著者と
イアンとの関係をいっそう悪化させることになったようです。)

それにしても、当時イアンが唯一信頼し、最も必要としていたと思われる存在が、(愛人という)
最も弱い立場にあるアニックだったとは……何という運命の皮肉なのでしょう。

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